2009/09/05

夏の旅 2009.08.08 - 2009.08.09



朝,朝食をたっぷりと食べ,8時30分に宿を出発.いい宿だったな.いつかまた使わせてもらおう.

国道311号を田辺に向けてひたすら走る.4時間かかると算段していた道程が,予想外に下りが多く,白浜温泉に到着したのが12時前.


温泉に浸かるのはもちろんだが,一カ所訪れたい場所があった.南方熊楠記念館である.大学で粘菌に興味を持って調べていたとき,南方熊楠という大学者が日本にいたことを知り,彼に関して調べていくうちその人柄がとても気に入ったのだ.彼は海外生活が長かったが,日本にいた時期の大半を田辺で過ごした.世界的な学者が田辺のような片田舎にいることがおかしなことだけれど,そういう王道ではない,やくざな感じが何とも言えず好きなのだ.

記念館に行くまでの海辺の光景は圧巻だった.エメラルドグリーンの海原が眼前に広がっていた.現行のsRGBのモニターの色空間では表現できないだろうな,と半ば諦めながら写真を撮った.


記念館の敷地内はまるで植物園で,珍しい植物が植えられていた.記念館内には熊楠の書簡や写本,顕微鏡から粘菌の図画などが所狭しと並んでいた.

記念館を出たところに,昭和天皇が南方熊楠に送った有名な一句を掘った碑が置かれている.
「雨にけぶる 神島(みしま)を見て 紀伊の國の生みし 南方熊楠を思ふ」


記念館に水木しげる作の南方熊楠の伝記漫画「猫楠」が置いてあったので買ってきた.熊楠がゲロを吐くタイミングを自在に操るという設定が実話だというのは,この漫画を読んで始めて知った.あらゆる意味でかなわないな.


記念館を観て回った後,「崎の湯」に入った.崎の湯は温泉の目の前がすぐ海でワイルド.硫黄の匂いがきついうえにシャワーがないので,その日一日,自分の体から卵の匂いがしていた.

温泉から出て昼食をすませ,白浜駅から和歌山駅まで電車に乗る.和歌山駅からフェリー乗り場まで自転車で行き,そのままフェリーに乗って四国の徳島に向かう.昼間とは打って変わって雨が強く降っていた.徳島でビジネスホテルに入って一泊する.

ホテルに入ったときにはすでに11時を回っており,雨が降り続いていた.「もしかしたら明日は自転車に乗れないかもしれないな」と雨の中,ビールを買いにコンビニに行きすがら考えていた.「今まで天気がよすぎたんだろう」そう考えることにした.

夏の旅 2009.08.07 - 2009.08.08


国道311号を抜けて,田辺に向かう.

紀伊山地を越えるのだから,険しい道が多いと予想していたが,道は広く整備されていて走りやすい.しかし,和歌山県と奈良県の県境で道幅が極端に狭くなる.県境を越えるとすぐに本宮に入る.本宮では本宮大社は詣でなかったが,渡瀬温泉に入った.湯は澄んでいて,湯華が浴槽にたっぷりこびりついていた.

温泉から出て,うどんとおにぎりの昼食を摂る.今日の宿はまだ決めていなかったので,ツーリングマップルに載っていた「霧の郷たかはら」に電話をかけ,宿をとった.

国道311号の周辺には熊野古道の王子が点在している.少し寄り道して継桜王子の野中の清水を飲みに山を登る.古来から人々を惹き付け,参詣に駆り立てる熊野という土地と,有象無象に神を視る日本人の不思議さについて少しばかり思いを巡らす.

寄り道をしたせいですっかり日が暮れた.宿は町の中にあるものとばかり思っていたが,国道から離れた高台にあり,日が落ちて行くのを横目で見ながら自転車を押して山を登った(宿のサイトを見ると標高300m).

延々と登った甲斐はあった.息を呑むような光景だった.


宿は新しくきれいで,食事は素朴でおいしかった.食材は主に地産の山菜や川魚で,味付けシンプルで,メインに熊野牛のステーキが出てきた.泊まっている人は若い人が多かった.熊野詣をしているわけではあるまいし,何の目的でこんな辺鄙な場所に泊まりに来るのだろうと不思議に思った.人のことは言えないけれど.