2008/07/21

真夏のリアリズム















天国と地獄(1963).
黒澤明監督作品.

僕が東京に引っ越してから1ヶ月くらいのとき,「ちょっと日帰りで遊びにいくか」と思い立ち,ふらっと赴いたのが江ノ島だった.「天国と地獄」にも江ノ島が映っていて,奇妙な共感を得た.

役者は皆さんうまい.だけど僕が「うまい」と唸ったのは寧ろ名脇役達だった.聴き込みに来た刑事に対して,江の電についてべらべらと喋る乗務員さんや,煙突から桃色の煙が出てきたときに,焼却場で聴き込みした火夫さん,脇役のリアリティとユーモアが光っていた.

刑事らが捜査会議している場面で,タオルでシャツの中を拭ったり,扇風機が回ってたりしてむさ苦しさをひしひしと感じたけれど,撮影は冬場だったようだ.

『なぜ真夏のシーンを真冬に撮影するのかと山崎努が黒澤に訊ねると「夏は暑いのでつい安心してしまう。冬に夏のシーンを撮影すれば、どうやって暑く見せようかみんな工夫するだろう」と答えたという』(wikipedia 天国と地獄(映画)より抜粋)

こういう黒澤監督だけど,真夏であるはずの富士山の冠雪だけは,どうにもならなかったみたいだ.

台本は現場で変化し続ける



















シャイニング(1980).
スタンリー・キューブリック監督作品.

高校2年の頃,ビデオを借りて観た記憶がある.
今回借りたのはDVDで,本編の他にメイキング映像が収録されていた.メイキング映像なのに,映画の緊張感がそのまま感じ取れたのが印象的だった.

メイキング映像で,映画の台本に関する話題が昇っていた.
台本は最初から決められたものではなく,バージョンがいくつもあり,それを色付きのページで区別していたようだ.
「初めの台本は使わない.毎日変わるんだからね」
主演ジャック・ニコルソンの言葉である.

台本は現場で変化し続ける.台本を基に演じる俳優もまた現場で変化し続ける.それがプロフェッショナルなのだろう.
そして,変化する現場を創り出し,制御するキューブリック監督も,またプロフェッショナルだな,と感じた.